会社を早く辞めるとき、人は必ず理由を言葉にします。

「人間関係が合わなかった」「思っていた仕事と違った」「残業が多すぎた」。

僕もそう言いました。29歳で初めて就いた正社員を、半年で辞めたときです。

でも、その理由は間違っていました。正確には、間違ってはいないけれど、本当の理由ではありませんでした。それに気づかないまま次の会社に行って、僕はまた同じ場所に入りました。

三十路フリ太郎
三十路フリ太郎

理由なんて、辞めたい気持ちがあれば何でもええやろ?

ともふみ
ともふみ

それだと、次の会社の選び方が決まりません。理由が違うと、同じ地雷を踏みます。

 

僕が半年で辞めたとき、言っていた理由

1社目は人材派遣会社の営業でした。辞めるとき、僕が周りに説明していた理由はこれです。

「営業のやり方が合わなかった。コロナ禍なのに、毎日飛び込みで回るのがきつかった」

嘘ではありません。2021年、「人と会うな」と言われていた時期に、アポなしで会社を訪ねて回る毎日でした。しかも派遣できる人がほとんどいないのに、派遣の営業をしていた。実際にしんどかった。

だから僕は、「自分は営業に向いていないのかもしれない」と思っていました。

それでも、職歴半年で選べる仕事は多くありません。次に入った2社目も、インテリア用品の営業でした。

年間休日84日、毎日終電、朝早く出ても残業扱いにならない。2年半、地獄でした。

 

2年後に気づいた、本当の理由

2社目にいる間、ずっと引っかかっていました。営業が合わないと思っていたのに、2社目の営業の仕事そのものは、おおむね合っていたんです。途中からWeb運用も任され、売上も伸ばせました。では、なぜまた辛いのか。

答えが出たのは、辞めることを決めて、自分の職歴を書き出したときでした。1社目と2社目に共通していたのは、営業かどうかではありませんでした。

どちらも「働く人を大事にしない会社」だった——これでした。

1社目は、ルールを守らない営業が当たり前の会社でした。途中から採用も担当しましたが、働く人を大事にしない採用の仕方に、自分が加担している感覚がずっとありました。2社目は、休みも基本給も少なく、朝早く出ても残業扱いになりませんでした。

僕が本当に耐えられなかったのは、営業という仕事ではなく「会社の体質」だったんです。

これに気づいていれば、2社目を選ぶときの基準はまったく変わっていました。「どんな仕事か」だけでなく、「働く人をどう扱う会社かどうか」で選んでいたはずです。

ともふみ
ともふみ

この一行に気づくのに2年半かかりました。もっと早く気づきたかったです。

 

確信したのは、3社目を辞めたときでした

ここまでなら「ブラック企業が2回続いただけ」と読めると思います。僕もそう思っていました。

32歳で入った3社目は、介護福祉業界の会社です。条件はこうでした。

  • 月給30万円(2社目は基本給10万円未満でした)
  • 完全週休二日制(2社目は年間休日84日)
  • 賞与3〜4か月

文句のつけようがありません。それまでの不満は、全部なくなったはずでした。

それでも僕は、1年ほどで辞めています。

理由は会社の風土や雰囲気が合わなかったからです。給料でも休日でもありません。

ここで自分の傾向がはっきりしました。僕が会社を辞めるときの理由は、毎回「条件」ではなく「その会社の空気」でした。1社目も、2社目も、3社目も同じです。

だからもし、あなたが「給料が安いから辞めたい」「休みが少ないから辞めたい」と思っているなら、1つだけ確かめてください。その条件が全部そろった会社なら、本当に続けられますか。ここで一瞬でも迷うなら、本当の理由は条件ではありません。

 

表向きの理由と、本当の理由はだいたいズレる

これは僕だけの話ではないと思っています。人が最初に口にする退職理由は、いちばん説明しやすいものが選ばれるからです。

よくあるズレを並べてみます。

よく言われる理由 その下にありがちな本当の理由
人間関係が合わない 特定の一人が問題(=異動で解決する)/ 質問できる空気がない(=会社の文化の問題)
思っていた仕事と違った 仕事内容ではなく、裁量がないことが不満/ 説明された話と実態が違った(=会社への不信)
残業が多い 時間の長さではなく、その時間に意味を感じられない
給料が低い 金額ではなく、上がる見込みが見えないこと
やりたいことと違う やりたいことが決まっていない状態そのものが不安

大事なのは、右側まで降りないと次の会社の選び方が決まらないということです。

「残業が多いから辞める」で終わると、次は残業の少ない会社を選びます。でも本当の不満が「意味を感じられない」だったなら、定時で帰れる無意味な仕事に移るだけです。実際、これで二度目の早期退職をする人は珍しくないと思います。

 

本当の理由を掘るための3つの質問

僕が2年半かけて遠回りした部分を、質問の形にしておきます。紙に書き出すのがおすすめです。頭の中だけだと、都合のいいところで止まります。

質問①:その不満、明日なくなったら残りますか?

「残業がゼロになったら、この会社にあと3年いられるか?」と自問してみてください。それでも無理なら、残業は本当の理由ではありません。僕の場合、「飛び込み営業がなくなっても、この会社に長くいるのは無理」でした。そこで初めて別の原因を疑えました。

質問②:前にも同じ気持ちになったのはいつですか?

アルバイトでも部活でもいいので、似た感覚になった場面を思い出してください。2回以上出てくるものが、あなたの本当の地雷です。僕の場合、引っかかった場面は職種ではなく、「会社が働く人をどう扱っているか」に関わるものばかりでした。

質問③:辞めた同僚のうち、うらやましい人は誰ですか?

その人の何がうらやましいのかを言葉にすると、自分が欲しかったものが見えます。給料か、休みか、裁量か、認められ方か。ここが次の会社を選ぶ軸になります。

 

自分では掘れないときの選択肢

正直に書くと、この作業は一人だとかなり難しいです。理由は2つあります。

ひとつは、疲れているときほど掘れないこと。心身が消耗していると「とにかく今の場所から離れたい」しか出てきません。僕も2社目の後半は、考える気力自体がありませんでした。

もうひとつは、自分に都合の悪い答えを避けてしまうこと。「自分にも原因があったのでは」という方向は、一人だと素通りしがちです。

ここで転職エージェントに行くと、少しズレます。エージェントは企業から報酬を得る仕組みなので、基本的に「転職する前提」で話が進むからです。理由を掘る場所としては向いていません。

迷っている段階で相性がいいのは、POSIWILL CAREER(ポジウィルキャリア)のような求人を紹介しないキャリアコーチングです。求人を出さない=あなたが転職しなくても困らない立場なので、「そもそも辞めるべきか」「何が嫌だったのか」からフラットに整理できます。

本格的なコーチングは有料ですが、初回のカウンセリングは無料です。言語化だけしてもらって、あとは自分で動くという使い方でも十分に元は取れます。

POSIWILL CAREERの無料カウンセリングを見てみる ▶
求人紹介なし/初回カウンセリングは無料

 

面接で早期退職の理由を聞かれたら

もうひとつの現実問題です。早期退職すると、次の面接で必ず理由を聞かれます。

ここで面接官が見ているのは、「同じ理由で、うちもすぐ辞めないか」の一点だけです。過去を裁きたいわけではありません。採用にはお金がかかるので、続くかどうかが最大の関心事なんですね。

だから答え方は、この3つの順番になります。

  1. 事実を短く——「会社の進め方に納得できないまま、営業を続けることができませんでした」。1〜2文で終える
  2. 他責で終わらせない——「上司が」「会社が」で止めない。「自分から確認しに行けなかったのも良くなかった」を一言添えると印象がまるで違います
  3. だから次はこう選んだ、を言う——「今回は休日や残業の扱いなど、働く人をどう扱う会社かを必ず確認しています」。ここが本題です

③が言えるかどうかが分かれ目です。そしてこれは、本当の理由が分かっていないと言えません。だから理由を掘る作業は、自分のためだけでなく面接のためでもあります。

逆にやってはいけないのは、無理に前向きな嘘をつくことです。「スキルアップのため」と言った瞬間、「では今の会社で何をしましたか」と必ず掘られます。僕はこれで一度沈黙しました。

ともふみ
ともふみ

盛らなくていいです。事実+自分の反省+次の基準。この形が一番強いです。

 

次を選ぶときに確認したこと

本当の理由が「働く人を大事にしない会社の体質」だと分かってからは、面接で条件を確かめることにしました。僕が3社目の面接で実際にしたのは、年間休日を直接聞くことです。答えは「120日」でした。

ほかにも、次のような質問は面接の最後の逆質問で聞けます(僕が聞いた質問そのものではなく、確かめたいことを質問の形にした例です)。

  • 「年間休日と、始業前・終業後の時間の扱いはどうなっていますか?」——ここを濁す会社は、働く人の時間を大事にしていません
  • 「入社1年目の人は、何ができるようになっていますか?」——育成の設計があるかが分かります。「人それぞれ」と返ってきたら要注意です
  • 「直近で辞めた方は、どういう理由でしたか?」——答えづらい質問ですが、濁されるか正直に話すかで会社の体質が出ます

聞きにくいと感じるかもしれませんが、聞かれて不機嫌になる会社なら、入ってからはもっと聞けません。僕はそのあと転職を重ねて、いまは業界紙の新聞記者として働いています。

短期離職そのものの説明の仕方は、短期離職は転職に不利?半年で会社を辞めた僕が次の転職を決めた話にも書いています。

実際に動くときは、短期離職を前提に話を聞いてくれるところを選ぶと説明の手間が減ります。第二新卒エージェントneoは第二新卒・既卒・中退を対象にしているので、そこが前提になっています。

第二新卒エージェントneo(公式)を無料で見てみる ▶
第二新卒・既卒・中退OK/登録・相談はすべて無料

 

まとめ:理由を掘らないと、同じ会社にもう一度入る

この記事のポイントです。

  • 最初に口にする退職理由は、いちばん説明しやすいものが選ばれる。本当の理由とはズレていることが多い
  • 僕は「営業が合わない」と思っていたが、2社目でも営業を続けたら仕事自体は合っていた。本当に嫌だったのは「働く人を大事にしない会社の体質」だった。気づくのに2年半かかった
  • ズレたまま次を選ぶと、形を変えた同じ会社に入る
  • 条件が全部そろった3社目も、風土が合わずに1年で辞めた。辞める理由は毎回、条件ではなく会社の空気だった
  • 掘るための3つの質問:①その不満が消えても残るか ②前にも同じ気持ちになったのはいつか ③辞めた同僚の誰がうらやましいか
  • 面接では事実+自分の反省+次の基準の順で話す。前向きな嘘は必ず掘られる

早期退職そのものは、失敗ではありません。理由を取り違えたまま次に行くことが失敗です。

辞めるかどうかを決めるより先に、なぜ辞めたいのかを1時間かけて紙に書く。それだけで、次の2年が変わります。僕はそれをやらないまま3社目まで行きました。

僕がフリーターから正社員になり、そこから抜け出すまでの全体像は、29歳まで職歴ゼロのアラサーフリーターが、4年で4社を経て33歳で新聞記者になるまでに書いています。