このブログでは、フリーターから正社員になった話をずっと書いています。年間休日が84日から125日になった話も、年収が上がった話も書きました。
ただ、それだけだと片手落ちです。失ったものも、はっきりあります。
今回はそっちを書きます。宣伝としては下手ですが、これを書かないと、この先の記事も信用してもらえないと思うので。

やっぱりそうやん。正社員なんてしんどいだけやろ。やめとこ。

そう読まれるのはちょっと困ります。損得は両方あって、僕の場合は差し引きで得でした。ただ、差し引きの中身は人によって変わります。
失ったもの①:2か月まとめて空ける、ということができなくなった
これが最大です。他は正直、どうにでもなります。
フリーターだったころ、僕は舞台に立っていました。公演が決まると、本番前の2か月は稽古で埋まります。シフトを削り、収入を落とし、そのぶん貯金を取り崩して稽古に行く。無収入に近い月が続くのはきついのですが、「そういう組み方ができる」こと自体が、フリーターの唯一にして最大の資産でした。
いまは、それができません。
収入は当時よりずっと増えました。機材だって、当時なら数か月悩んだ値段のものを普通に買えます。でも、2か月の稽古期間は、もう作れません。有給を全部使っても足りないし、そもそもそういう使い方をする前提の制度ではない。
お金で買い戻せないものが一つだけあって、それがまとまった時間でした。
これは「正社員になったら趣味ができない」という話ではありません。週末にやれることは、むしろ増えました。失ったのは「数週間、生活の中心を仕事以外に置く」という選択肢のほうです。
失ったもの②:人間関係を、選べなくなった
バイトのころは、合わない人がいれば、シフトをずらせばよかった。最悪、辞めても次がありました。時給1100円の仕事は、探せばまた見つかります。
正社員は、そう簡単には動けません。合わない人がいても、同じ部署なら毎日顔を合わせます。異動を待つか、我慢するか、転職するか。どれも時間がかかります。
「辞めればいい」と言えなくなるのは、辞めることのコストが上がったからです。これは責任が増えたことの裏返しでもあって、悪いことばかりではないのですが、身軽さは確実になくなりました。
失ったもの③:平日の昼間が、まるごと消えた
地味に効いたのがこれです。
フリーター時代、平日の昼間は空いていることが多かった。役所も銀行も病院も空いている時間に行けたし、映画館もガラガラでした。この「世の中が空いている時間に生きている」感覚は、正社員になると消えます。
年間休日は84日から125日に増えました。その話はこちらに書きました。休みの日数は明確に増えたのに、混んでいる日にしか休めなくなったという逆転が起きます。
これを後悔と呼ぶかは微妙なところですが、想定していなかったのは事実です。
いちばん後悔しているのは、1社目の選び方です
ここが本題かもしれません。
僕は29歳で初めて正社員になりましたが、その1社目を半年で辞めています。
理由を正直に書くと、「受かったから入った」からです。書類がほとんど通らない時期が続いたあとで、やっと出た内定でした。条件も仕事内容も、深く見ませんでした。とにかく正社員という肩書きが欲しかった。
結果として、半年で辞めました。そして職歴に「短期離職」が1行増えました。次の応募で、これを説明する手間が発生します。フリーターだった期間の説明に加えて、もう一つ説明することが増えたわけです。

「正社員になること」を目的にすると、こうなります。目的にすべきだったのは、続けられる場所を選ぶことでした。
フリーターから抜けるときにいちばん危ないのは、選択肢が1個しかない状態で決めることです。比べる対象がないと、良し悪しの判断ができません。1社しか受かっていないと、その1社が良く見えます。
短期離職そのものは、致命傷ではありませんでした。そのあとどう動いたかは短期離職は転職に不利?半年で会社を辞めた僕が次の転職を決めた話に書いています。ただ、回避できた回り道だったとは思っています。
それでも、差し引きでは得でした
失ったものを3つ書いたので、得たほうも正直に並べます。
| 失ったもの | 得たもの |
|---|---|
| 数週間まとめて空ける自由 | 先の予定を立てられること。収入が読めること |
| 人間関係を選べる身軽さ | 同じ人と長く働くから積み上がる信頼 |
| 平日昼間の余裕 | 年間休日84日 → 125日。休みそのものは増えた |
| — | 月給は1社目の22万円から、3社目以降は30万円に。時給計算では届かなかった額 |
| — | 年齢を重ねることが、不利ではなくなった |
最後の行がいちばん大きいと思っています。
フリーターを続けていた30歳前後のころ、1年経つごとに、状況が悪くなっていく感覚がありました。時給は上がらないのに、年齢だけ上がる。同じ仕事をしているのに、通る求人が減っていく。
正社員になってからは、そこが逆になりました。1年働くと、1年分の経験が積み上がる。これは金額の話以上に、精神的に大きかったです。
正社員を勧めない場合もあります
このブログはフリーターの就職を扱っていますが、全員に勧めるつもりはありません。次のどちらかに当てはまるなら、急ぐ必要はないと思っています。
① 期限付きで、本気で追っているものがある場合
目指しているものがあって、そのために時間を空けているなら、それは正しい設計です。まとまった時間が要る挑戦は、正社員をやりながらでは難しい。僕は舞台をやっていた8年間を後悔していません。
ただし、期限を決めてください。僕がしんどくなったのは、目的がぼやけたのに場所だけ残っていた時期です。その話は店長は年下の女性、同期は大学1年生。27歳フリーターの居心地の悪さの話に書きました。
② いま体調やメンタルが落ちている場合
正社員になると、辞めるコストが上がります。回復していない状態で入ると、辞めにくい場所に自分を固定することになります。先に整えるほうが結果的に早いです。
逆に言えば、この2つに当てはまらないなら、先延ばしにする理由はあまりありません。1年待って条件が良くなることは、フリーターの場合ほとんどないからです。
後悔を減らすためにやるべきだったこと
僕が29歳の自分に言うとしたら、一つだけです。
1社しか受かっていない状態で、決めるな。
比べる相手がいないと判断できません。同時に2〜3社を進めておくと、条件も雰囲気も相対的に見えます。「受かったから入る」ではなく「選んで入る」に変わるだけで、続く確率がまったく違います。
そのためには、応募先の候補を最初から複数持っておく必要があります。ここは一人でやると、求人を探す時間そのものが足りなくなります。僕は月160時間シフトに入りながら探していたので、単純に手が回りませんでした。
20代なら、20代フリーター向けのミラフリのように、フリーター・既卒を前提に求人を出しているところで候補を並べるのが早いです。複数を同時に見られる状態を作ること自体が、1社目を間違えない対策になります。相談はオンラインで無料です。
そして、この記事を読んで「そもそも自分は正社員になるべきなのか」から迷っているなら、求人を紹介されるところに行くと話が噛み合いません。求人を出さないPOSIWILL CAREERのようなキャリアコーチングのほうが、この段階には向いています。初回のカウンセリングは無料です。有料サービスなので、合わなければそこで終えれば済みます。
![]()
キャリアコーチングが向く場面・向かない場面はキャリアコーチングは意味がないのか?有料で求人も出ない、それでも使う場面に書きました。
まとめ
- 失ったのはまとまった時間。お金で買い戻せなかったのはこれだけ
- 人間関係を選べる身軽さも消えた。辞めるコストが上がったから
- 休みは84日から125日に増えたのに、混んでいる日にしか休めなくなった
- いちばんの後悔は1社目の選び方。「受かったから入った」結果、半年で辞めた
- それでも差し引きは得。最大の理由は年齢を重ねることが不利でなくなったこと
- 期限付きで追うものがある人、いま体調が落ちている人には勧めない
- 後悔を減らす方法は一つ。1社しか受かっていない状態で決めない
正社員になれば全部よくなる、とは書けません。実際、僕は1回失敗しています。
ただ、失ったものは自分で選んで手放したもので、フリーター時代に感じていた「毎年少しずつ悪くなる感覚」は消えました。そこを交換したのだと思っています。
29歳から3年で何がどう変わったかの全体像は、29歳まで職歴ゼロのアラサーフリーターが、4年で4社を経て33歳で新聞記者になるまでに書いています。




